
自分と他人との間に生じる「認識のズレ」をテーマにした短編漫画で注目を集める漫画家・理系女ちゃん(@rikejo_chan)。SNSで発表した「先輩は綺麗な人だった」の投稿が話題を呼び、オムニバス短編集『あなたの正義 わたしの絶望 ~その「主観」が毒になる時~』の電子書籍化に至りました。
今回はその作品集の中から、あるひとりの女性の物語をご紹介します。「世界一素敵な彼氏」と恋に落ちた女性の物語、一体どんな結末を迎えるのでしょうか。

自分と他人との間に生じる「認識のズレ」をテーマにした短編漫画で注目を集める漫画家・理系女ちゃん(@rikejo_chan)。SNSで発表した「先輩は綺麗な人だった」の投稿が話題を呼び、オムニバス短編集『あなたの正義 わたしの絶望 ~その「主観」が毒になる時~』の電子書籍化に至りました。
今回はその作品集の中から、あるひとりの女性の物語をご紹介します。「世界一素敵な彼氏」と恋に落ちた女性の物語、一体どんな結末を迎えるのでしょうか。




美咲はたまたま入ったバーで隣に座った真斗と知り合います。真斗は有名な外資系企業に勤める超ハイスペック男性でした。中小企業のOLの自分とは釣り合わないと思ったものの、すぐに仲は深まって恋人になります。






これまでの人生つらいことばかりだったのは、きっと彼に出会うためだったのだと彼女は信じます。世界で一番幸せだと彼女は信じるのですが…。




一方、そんな彼女を大学時代から見守っていた大学の同級生がいました。彼の目から見た美咲は、可愛いけれどどこか危なっかしい子でした。恋愛体質の彼女の周りにはいつも男性がいましたが、どう考えても付き合うべきではない相手ばかり。彼女は好きと言われたら誰にでもついていってしまうため、トラブルも絶えませんでした。




彼はそんな彼女の相談相手をずっと続けていましたが、やがて「外資系企業に勤めるエリート」と自称する男に騙され、400万円の借金を背負ってしまいます。助言は彼女には届かず、彼女は相手に逃げられた挙句借金を背負って夜の街で働くこととなり、それ以降連絡はつかなくなってしまいました。



彼が最後に彼女を見かけたとき、彼はホスト風の男と腕を組み歩いていました。そして彼女のSNSには「世界一素敵な彼氏」「私なんかでいいんだろうか…頑張らなきゃ!」の投稿が……。
このエピソードを描いた作者の理系女ちゃんにお話を伺いました。
ーー "恋は盲目"に陥ってしまった女性を描いています。この題材を選んだ理由やもとにしたエピソード等があれば教えてください。
理系女ちゃん:「人を見抜く力」をつけることは、生きていく上で大事なのにも関わらず身につけるのがとても難しい能力の一つだと思います。マッチングアプリを使うことも一般的になり、接点のほとんどない人と付き合う場合も少なくないでしょう。そこで、結婚という人生の岐路に立っている主人公を題材にすることで、「人と付き合う上でのリスク」をよりリアルに感じてもらえればと考えています。



ーー "恋は盲目"に陥ってしまった女性の描き方がリアルだなと思いました。キャラクターを描くうえで意識したことはありますか?
理系女ちゃん:美咲の心の声を自身にとって都合のいい情報でしか構成されていないようにすることを意識しました。一話の『先輩は綺麗な人だった』の主人公にも共通して言えることかもしれませんが、「自身にとって都合の良い情報だけ受け取る癖がある人」は様々なトラブルに巻き込まれやすいと感じています。



ーー 「美咲は今、どうなっているんだろう...」と読者の想像を掻き立てる不穏なラストが印象的でした。本作を通して伝えたいこと・考えてほしいことを教えてください。
理系女ちゃん:美咲のような人は、適切なアドバイスだったとしても、少しでも自分と意見が合わなければ関係を切っていく傾向にあるので友達が少ないと感じます。しかし「正しさ」なんてものは視点によりますし、自分に見えている世界が偏っていないとも限りません。これを読んだ方が周りに自身の意見を否定されたときに、少しでも相手の視点にも立ってみる意識を持ってくれたら幸いです。
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理系女ちゃんが描く物語は、誰の心にも潜む「都合のいい主観」の危うさを鋭く突きつけます。自分が見ている景色は、果たして本当に「真実」なのでしょうか? もしも周囲からの声が「間違った話」や「耳の痛い話」に聞こえたら、それはあなたを傷つけるためではなく、助けようとする言葉なのかもしれません。
※敬称を含むペンネームのため、本来は「理系女ちゃんさん」となりますが、本文中では読みやすさを優先し「理系女ちゃん」と表記しています。
取材=mk/文=レタスユキ