
夫の高政が執行役員を務めるIT企業で、ウェブデザイナーとして働いている香澄。最近入社してきた新人ウェブデザイナー・海音の研修を担当した香澄ですが、なぜか彼女から猛烈に嫌われていました。それもそのはず。なんと夫と後輩は、社内不倫関係にあったのです…。
夫の不倫を証明しようと、さまざまな謎に立ち向かう妻の姿を描いたミステリコミック『夫の不倫を証明できない』。今回は、作者のぱん田ぱん太さんに注目シーンについてのお話を聞きました。
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■あらすじ


SNSでの匂わせ投稿から、夫が不倫をしていることに勘づいた香澄。不倫自体も最悪ですが、それよりも我慢ならなかったのは、香澄の部屋に不倫相手が勝手に入り込んでいることでした。もともと香澄は、自分のプライベートスペースを大事にしていて、他人に踏み込まれることが大嫌い。夫も香澄の価値観に理解を示してくれていたのに、不倫相手を部屋に入れるなんて、許し難い行為でした。

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そもそも香澄がプライベートスペースにこだわるのは、高校生の頃、喧嘩が絶えない両親から一人離れて安心できる場所が必要だったから。それなのに、ある日、母親がリビングやダイニング、そして香澄の部屋にまで監視カメラを置いたことがわかり、「外さないならこんな家出て行ってやる!」と泣き叫んで訴えたことも。
今も香澄に大きなトラウマを残す、あの時の母親の行為には、一体どんな理由があったのでしょうか…。
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子どもの頃の出来事が今につながっていたとしたら…?
――このストーリーの主要な登場人物、香澄、海音、高政の三人ともが「機能不全家庭」で育っていることがストーリーの中盤で判明して、驚きました。
ぱん田ぱん太さん:子どもの頃の家庭環境や家族との関係、出来事、記憶がその後の人生に非常に大きな影響を与える、というのはずっと私の描くマンガの大きなテーマとなっています。私の書籍第1作目『欲しがるあの子を止められない』、第2作目『ちっちゃくてかわいいワタシ』でも、そこがキーポイントでした。
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――主人公の両親も大きな問題を抱えていたことが徐々に明らかになってきます。子どもから見た親の姿と、実際に起こっていた出来事との乖離にはゾッとしました。
ぱん田ぱん太さん:これは多くの人にとってとても身近な経験だと思います。親子関係や子ども目線などに関係無く、例えば、同じ出来事でも友達Aの目線と印象で聞いた話と、友達Bの目線と印象で聞いた話がまったく異なって聞こえる。「一方の目線から見た出来事だけでは真実は分からない」というのは、現実世界に非常によくある事例であり、だからこそ私の作品に多く出てくる展開なので、それを描きたかったです。
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隙あらば伏線を張る!トリックに気づいた時の気持ちよさを意識

――後半で次々と伏線が回収されていく展開にはすっきりしました。ミステリタッチのストーリーを作る上で、伏線の張り方、回収の仕方にどんな工夫をされていますか?
ぱん田ぱん太さん:とにかく「隙あらば伏線を張る」!(笑)。これも編集さんからのアドバイスで、「伏線はかなり強調して分かりやすく描いて問題無い」とのことなので、それを意識して描いています。回収の方は「どれが伏線だったのか分かりやすく描く」ということですね。読者さんが「あっ、あのシーンのことか!」とすぐに思い当たる方が気持ちいいと思うので。あとは、伏線が多めなので、うっかりいくつか回収を忘れないようにするということですが、これは編集さんがチェックしてくれるので多分大丈夫です(笑)。
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――謎を解いていく中で、「特にここに注目して欲しい」というシーンがあれば教えてください。
ぱん田ぱん太さん:香澄、高政、海音の3人のそれぞれの過去エピソードです。3人のそれぞれの過去が物語の重要なポイントに繋がっていますので、ぜひじっくり読んでほしいです!
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夫と部下の不倫が、香澄自身の“過去の出来事“にまでつながっていくミステリ。読者は香澄より先にその真相に辿り着くことができるのか…ぜひ確かめてみてくださいね。
取材・文=宇都宮薫
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